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元マラソン選手・原裕美子の告白「食べて吐くために万引きを…摂食障害と窃盗症に苦しみ抜いた15年」 富士山マラソン

万引きをやめたいのに、やめることができない。窃盗を繰り返す人の中には「窃盗症(クレプトマニア)」という病気に苦しむ人が一定数いることが、近年明らかになってきている。女子マラソン元日本代表選手の原裕美子さんが窃盗症に陥った背景には、マラソンのための過酷な減量が原因で始まった摂食障害があった(構成=古川美穂 撮影=藤澤靖子)

【写真】北海道マラソンにて1位でゴールした原さん

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◆44キロまで落とすようにと言われ

「食べ吐き」を始めたきっかけは偶然です。私は走ることが大好きで、中学・高校の時は、朝でも夜でも暇さえあれば走っていました。小学校の時イジメに遭ってから対人関係が少し苦手だったので、速く走ることで周りの人が喜んだり、自分を受け入れてくれるのがとても嬉しかった。

マラソン選手は体重が軽いほうが有利です。高校時代は食べた分だけ走って体重を減らす指導を受けていました。当時のベストコンディションは44キロ(身長163センチ)。ところが2000年の京セラ入社時、49キロまで増えてしまって……。44キロまで落とすようにと言われ、思うように体重が減らないと厳しい食事制限を課されるようになりました。

体重測定は1日に4回から6回。社員食堂での昼食は、社員の方たちがパスタやデザートをおいしそうに食べているのを喉から手が出るような気持ちで眺めながら、用意されたたった半玉の蕎麦やうどんで我慢。お茶や水も、体重が増えるからとセーブしていました。

競技を続けるためにはとにかく体重を減らすしかない。ストレスのせいか、当時は毎晩のように金縛りにあっていて、気がつけば、あれだけ大好きだった走ることが嫌いになっていました。

ある日のこと。体重を落とすため、いつものように寮で夜中に隠れてエアロバイクを漕ぐ時、汗をかきやすいようにと先にお風呂で体を温めていました。すると湯船で急に気分が悪くなって、タイルの上に吐いてしまったんです。夕食後にほんのひと口のつもりで炭酸飲料を飲み、気がつくと1リットルも空けてしまったのが原因かもしれません。

お風呂を出てから体重を測ると、入浴前よりも減っていました。その時、頭に浮かんだのはたったひとつ。「やった! これで好きなだけ食べられる」ということ。

それをきっかけに食べ吐きを覚え、以来、毎日の生活がずっと楽になりました。食べたいものを存分に食べられ、全部吐いてしまえば自然に体重も落ち、指導者に怒られることもなくなった。いいことずくめだと思っていたんです。

◆何年にも及ぶ食べ吐きによって

ーー2005年名古屋国際女子マラソン優勝。同年、世界陸上ヘルシンキ大会6位。07年大阪国際女子マラソン優勝。積み重ねる華やかな戦績の裏では、摂食障害が確実に原さんの心身を蝕んでいった。

選手として注目を浴び始めると、常に勝たなければいけないというプレッシャーが大きくなりました。周囲から「試合に出るからには優勝じゃないと意味がない」と言われ、自分自身も「絶対に結果を残さなければいけない」と。

毎日ものすごい量の練習やトレーニングをこなしながら、食べ吐きも続いていました。ある時チームのキャプテンに吐いているのを気づかれて、「そんなことを続けていると死んじゃうから、やめたほうがいい」と言われたことがあります。でもその時は競技で結果を出せていたから、そんなことあるわけがないと思っていた。

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